筒井宣政(つつい のぶまさ)さん(76歳)は(株)東海メディカルプロダクツ 会長です。
父親の東海高分子化学(株)というプラスチック加工会社にいたときの50年前に生まれた娘の佳美さんが先天性の
心臓の疾患で、娘のために子供用の人工心臓の研究開発を東京女子医科大学の指導を受けながら始めました。
大型犬を使った最初の動物実験が成功しましたが、そこまでで8億円も使いました。
たくさんの動物実験そして人間による治験臨床をして厚生省の許可を取るまでに1,000億円ぐらいかかることがわかり、
資金不足と販売市場がなかったため、人工心臓の開発を断念して別の器具の研究に変えました。
しかし、娘の佳美さんの命は人工心臓でないと救えな
かったのです。父親の筒井宣政さんとしては苦渋の決断ですね。
娘の佳美さんのために人工心臓の研究を奥さんと2人でやると言っていたので娘に言いにくかったですが、しば
らくして娘の佳美さんに言ったら、「お父さんとお母さんが自分の病気のために、人の命を救うような器具
をつくってくれたことを、佳美はすごくうれしい」と言ってくれたそうです。
父の筒井宣政さんを責めることなく、いい娘さんですね。
筒井宣政さんの娘の佳美の病気とは三尖弁閉鎖症(さんせん
べんへいさしょう)という心奇形で発症率はおよそ1%です。
生後1日でチアノーゼ(低酸素血症)などの症状が現れて 治療、手術をします。
日本でのは患者数約3,500人で10年生存率は約40%で50歳以上生存することは困難だと言われています。
筒井宣政さんの娘の佳美さんは26年前に23歳で亡くなりました。
日本だけではなく、アメリカの大学にも問い合わせましたが、当時の医学水準はまだ低くて、
手術中に亡くなるでしょうと言われて手術をあきらめました。
日本では臓器移植を希望する患者は約1万4千人で、日本の医療が発達することが望まれますね 。
筒井宣政さんが研究開発した器具とは“IABPバルーンカテーテル”で心筋梗塞や狭心症で倒れた人を一時的に
助けるもので、足の動脈からこの器具を心臓の近くの大動脈に挿入して心臓の働きを助けます。
開発困難と言われていたもので初めて国産化を成功させました。
筒井宣政さんの娘の佳美さんが亡くなった1991年には1,500本ぐらい売れて、
2年前には年間6,500本売って国内のシェアは2割だそうです。外国でも使われているんですね。
22年前から日本人工臓器学会との共同で娘の佳美さんの名前をつけた研究助成制度「Yoshimi Memorial T.M.P.
Grant」を開始しました。 人工臓器でいい論文や、いい研究をした人に、賞状と研究費(100万円)をご自身の会社の
T.M.P. (東海メディカルプロダクツ)から毎年あげています。
娘の佳美さんの永久的なメモリアルで、筒井宣政さんと奥さんが生きているうちは
できる限りやろうと思っているそうです。
感動的な話ですね。一人の人の善意が社会に波及する効果がありそうですね。
心臓疾患の方ではできないことなので、健康な人がすることですね。